世の中自粛ムードの4月15日、釣り堀ツアラーは、長き冬眠から目覚めたのであります。
行く先は新潟県村上市です。今年もとうとう始まってしまうのであります、見えない、当たらない、釣れない、三ない地獄がであります。いわば、自粛の釣りなのであります。
というネガティブな出だしで始まる釣り堀ツアラー旅日誌、この度はどうなりますのでしょうか、結果は言わなくても明白ですよね。

さて、釣り堀ツアラーが愛機、「アフリカツイン」に火を入れましたのは、当日の朝六時半であります。
高速で行こうか、下道で行こうか、出足から迷うツアラー。高速道のインター付近まで行って、急に下道で行こうと気が変わり、国道八号線に出たのであります。
「いや、待て待て、毎回下道で行って、出遅れておるではないか、目をつけたポイントで、先に釣られてしまうことはよくあること。やっぱり高速で行こう」
釣り堀ツアラーは再々度、思い直すのでありました。その時は8号線を走っておりましたので、柏崎のインターまで戻るというのは無粋な気がして、長岡のインターから高速へ突入することとしたのであります。
今年から大人になったツアラー、長岡までの国道を、無駄な追い越しや、すり抜けはせずに走りました。でも、気が付くと、車列の先頭へいるのでありました。
今日は気温がが上がる予報でしたが、朝の気温は十度を下回っております。高速道へ乗ったツアラーは、寒くない程度の速度で走るのであります。お急ぎの車両がツアラーを抜いて行きます。二、三台は見逃してやります。五台、六台目になると、黙っていらられなくなりました。ちょっとだけアクセルを開けてしまうのであります。
さすが大型二輪。わわあわあわー、どびゃびゃびゃー、であります。またまた、車列の先頭になっておりました。
大人げない振る舞いでした、反省しております。こういう他人を不快にするような振る舞いは、明らかに憑きを落とします。憑きという味方が必要な釣りであるのに係わらず、憑きを落としてから望むのであります。どうです。のっけから間違っているでしょう。
ということで、岩船のインターで高速を降りたツアラー、目指すは下流のポイントです。今年は雪が多く、この川の上流域には残雪があるとの情報をいただいておりました。積雪性鬱症候群のツアラーには、釣りに来てまで雪の上を歩きたくない。そういう強い思いがありますので、混んでいるだろう事は承知で、下流を選ぶのであります。
下流のポイントには、橋のたもとより、ダートを下って行きます。ダンプがダートを削り、きついカーブには深い轍があります。大型二輪で轍にはまるととんでもないことになりますので、注意して轍を躱しながら河原へアフリカツインを入れました。
河原へ出たすぐの川は、バックが広く、フライフィッシングはやりやすいのですが、そこは、お二人ほどフライフィッシャーが先着しておりました。で、ツアラーはもう少し下流へ移動し、そこにアフリカツインを止めました。幸い、ここは先行者の姿は見えません。



バイクにツーハンドのフライロッドをたてかけ、フライを結んでおりましたら、下流の方から、軽自動車が上がって来て、ツアラーの目の前に止まります。「なんじゃい」そう思って、視線を上げると、地元のおじさんらしき人が不敵な笑いを浮かべ、こちらを見ております。少し会釈を返すと、おもむろにドアを開け、降りてきました。「???」と訝しく拝見しておりましたら、車の後部ハッチを開けて、なにやら掴み出しました。
それは……。さ、サクラマス。呆然として、その魚を拝見いたしましたのであります。それは、オヤジの立つであろう、目の前のプールの開きで捕れたそうであります。
「ヒー、やっぱ、ひ、一足遅かった-」ツアラーはその場に膝を折りましたのでした。あの時、なんで素直に柏崎から高速へ乗らなかったのか、途中、天玉うどんの誘惑に負けて、なんでサービスエリアへ寄ってしまったのか、後悔の念が脳裏をよぎりました。
まあ、そういうことはある。気をとりなして一投目であります。
「うりゃあああー」本当に声は出しませんよ。そういう気分で投げます。
今日は水量が多く、沖まで立ち込めません。竿一本出られません。バックはネコヤナギがお高く繁茂し、川の中にまで葦が茂っております。しかも右岸です。右利きのツアラーには、最も投げ難い状況でした。



入ったばかりは風はありませんでした。釣りをして一時間くらいでしょうか、急に下流から風が吹き始めます。それも、下流方向へラインで引かれてそちらへ曲がっているはずのロッドが、あろうことか、上流へ曲がるほどの風です。
しかし、ツアラーは、バックハンドのシングルスペイで、黙々と釣り下るのであります。
ハックが狭いとか、風が強いとか、水が濁った、水量が多い、少ない、そういう言い訳はできないのです。この釣りで言える言い訳は、「そこに魚がいなかった」これだけであります。
今朝、ここには確かに魚はいたのです。地元のおじさんが現に釣ってます。と言うことは、「ここには魚がいなかった」そういう言い訳はできないのかもしれません。では、どういう言い訳をしようか。ツアラーはふと考えました。「そうじゃねえ。釣りゃいいんだ」
頑張りました。下流から吹き上げる風に悩みつつも、丁寧に二流し、三流し。気が付けば午後二時を回っております。お昼も食わずにやっていたわけです。当たりも気配も、まったくありません。
「なんなんだ、俺は」そう独りごちて、一気に気が折れました。悄然と首をうな垂れてしまう釣り堀ツアラー。その首をもたげて一言。「今日はこのくらいで勘弁しておいてやる」釣れないフライフィッシャー特有の慣用句を吐き捨てて、国道7号線を西へ走るのでありました。
途中、まる七というラーメン屋で、遅いお昼を食べたことを追記しておきます。
ここではツアラーはカレーセットなる、掟破りをしてしまいました。カレーは懐かしくて旨かったっす。ラーメンはいうまでもありません。あっさりして癖がなく、大人向けのラーメンでありました。国道7号線を新発田方面に行かれる方は、是非お寄り下さいませ。

今週は放流、しません。小さく書いておきます。