いよいよ今年の渓流シーズンが終わるというところで、今年、尺以上の魚を釣っていない事に気がついた釣り堀ツアラーは、怒濤の飛び石含む三連ちゃんという釣りに逝ってまいりましたのでございます。
逝った先は全部同じ水系です。
このような川でした。



沖縄上空で謎の一回転をしてのけ、大陸方面へ進むことなく狙ったように我が国を縦断して、騒ぎを撒き散らした台風15号が過ぎ去って、急に朝晩が寒くなりました。
ちょっと冗長な出だしであります。
その朝の寒空を、釣り堀ツアラーは上述の渓流へ向けて、XR250モタードを走らせるのであります。
道路に設置の気温計は、柏崎市付近で13℃、渓流が近づくにつれてそれを下げ、最低で10℃を記録しておりました。
ツアラーはまだ夏装備なので寒い寒い。30分も無茶な走行をしておりますと、腹の底から寒気が上がり、前を走る農作業の軽トラを抜き去る元気が失せてくるのであります。
それでもXR250モタードは走ります。寒気で発生した霧で、ヘルメットのシールドが曇り、前が何も見えなくとも走るのであります。
XRには、大型バイクのあっという間の加速感は期待できないのですが、中間速度でのパンチは、楽しいものがあります。
ギアを二段ばかり蹴り落として、一気にアクセルを開けると、パンチの効いた加速を味あわせてくれます。それと軽いので、コーナーは軽快です。ヒラリンコ、ヒラチンコ、ヒラキンタマと形容されるように、次から次へと現れるコーナーを、右へ左へとバンクさせながら走る抜けて行くのであります。

家を出てから約1時間、目的の渓流に到着いたしました。岩魚の川と聞いておる、その下流域です。
ここで、ツアラーが取り出しました武士の魂は、4番10ftのロッドです。今年はアウトリガースタイルのニンフがツアラーの中で流行っているので、ブレイテッドのリーダーに、ティペットを5ftほど付け、その一番先へ、ヘアーズイヤーのニンフ。二番目にショットとウエットフライ。それで収まらず、もう一個、三番目にウエットフライを結びましたのであります。
フライ三個もつけた欲張りな仕掛けを左手に抱えて、川へ降りたツアラー。まず一投です。
ドリャー。
重たい仕掛けは、フライフィッシングらしからぬ軌道を描いて、ラインが伸びた、その後から間が抜けたようにゆっくりと飛んで、間が抜けている割には、大きな水音を立てて着水いたします。
着水したらラインを張り、仕掛けが根掛かりしないよう、また、誘いもかねてチョン、チョンとロッドで煽るようにし、仕掛けを下流へ誘導します。
数投投げ、淵の頭を舐め回し、淵のケツをこれから舐め回そうと企むツアラーであります。淵のケツへ仕掛けをドボンと入れて舐めました。ふとリーダーが緩んだ気がして、ロッドを煽ってみれば、目刺しより少し大きめの岩魚がついておるではありませんか。
よしよし、良い子だ。



どうです、釣りましたよ。とあらためて威張るほどではありません。というか、恥ずかしい。
トホホーな思いで、この淵でもう一つ同じサイズの岩魚を釣って、下流へ下りました。
小さいながらも最初のポイントで岩魚を釣ったツアラー。若干気を良くしております。もっと釣れるはずと、下流をあちこち探りますが、おかしな具足なんです。それからアタリが一つあっただけで、いかにも居そうなポイントは全て、もぬけております。
注意深く遡行しておりますので、魚は散らしていないはず、否、注意深くしていても、足元から小魚を散らすのはままあること。
それがない。
ということは、魚がいない。
数日前、台風の通過した後のことです。天気予報ではこの辺りに大雨警報が発令されておりましたのであります。岸辺を見てみれば、葦が水流で倒された後がくっきりと、しかもそれが新しいのであります。
そういえば、と、ツアラーは河原で首巡らすのでありました。
ここは去る7月の新潟福島豪雨の時にも、大増水した川であります。その爪痕はあちらこちらにありました。河畔林のとんでもない高さに、流木やゴミがかかっております。
これは、これは、これはー、ツアラーは頭を抱えるのでありました。
「魚は、魚は、流されたんだー」
重大な事実に気が付いたツアラー。ふと時計をみればお昼近くなっておりました。釣り堀へ帰らねばならないのであります。
ふう、と一つ溜息をついて、XR250を駆って、帰路を急ぐのでありました。


翌日、世の中三連休であります。
禁漁も間近ということであれば、逝くでしょう。
昨日、川がもぬけていることを確認したツアラー。今日、XR250モタードを止めた川は……。性懲りもありません。同じ川です。今日は魚が流されたと推測して、下流にある堰堤の下へ入りました。
何もない平凡な瀬が続く流れです。今日はアウトリガーニンフではなく、普通のウエットフライで釣り上がります。昨日は釣り下がりました。というのは、昨日の入渓点よりすぐ上に、堰堤があったからです。今日は渓流釣りのセオリーに従って、釣り登るのであります。
下から丁寧に、ポイントの脇で突っ立つこともなく、瀬の緩い場所、岩の裏、流れの集まるところ、一つ一つに時間を掛けて探りながら釣り登りました。全てに注意を払ったつもりです。
この川は、ツアラーには冷とうございました。ウエーダーも水漏れして、冷とうございます。
しばし遡行して、駄目と見切りをつけましたのでございます。
見切りを付けて次に逝きましたのは、この川が合流する本流でございます。
本流は台風後の増水の名残がありまして、それとも、もしかすると工事かもしれません。若干濁りがあります。そして増水しております。
平水ならプールであろう目の前の流れも、緩い所は岸際の数ヤードしかなく、あとは棒のように一律で流れています。
それでも、一尾の魚を求めてツアラーはやるのであります。
手に持った武士の魂は、昨日と同じです。このロッド一本あれば、藪沢から本流まで釣りにはなります。
仕掛けは欲張りなアウトリガーニンフです。それを華麗なキャスティングなどは度外視して、本流の流芯脇へぶち込むのであります。
重たいショットが無理矢理速い流れを切り裂き、ニンフを川底へ沈めて行きます。数投で根掛かり。また数投で根掛かり。
なんなんじゃー。
フライを巻くのが辛いんですよ、老眼なんで。
一回の根掛かりで3本ずつフライを無くしている。しかもアタリすらない。費用対効果の面からすると、これほど効率の悪い釣りはありませんぜ。
この日はノーフィッシュで尻尾を巻いたツアラーであります。帰った釣り堀で、フライも巻いたツアラーでありました。


このままでは、このままでは、逝くに逝けねえのであります。
禁漁まであと5日。
三連休は終わり、世のオトーサン方は仕事へ出掛けておる平日。
悶々としたツアラーは、仕事をずる休みしました。
社会人としては失格ではありますが、釣り師、そして釣り堀ツアラーとしては、まさに当たり前の行為です。これぞまさに釣り師の鏡です、拍手を贈りましょう。
という、社会人としてあるまじきツアラーが向かいましたのは、また同じ渓流です。
口惜しく思われたからです。ツアラーは思うよりしつこいのです。なんとしても、ボーズを喰らったその川で、尺を超える魚を釣らなければ気が収まらんのであります。
今朝もXRを引きずり出し、火をいれました。三日通った道を同じように走りました。車でもいいのでありますが、どうもツアラーにはモンゴル人の気質といいましょうか、モンゴルで馬を駆って走り回ってた前世があるようで、バイクの自由さが大好きなんです。それもオフロード車のどこでも行ける気軽さが好きですね。大型バイクのトルクある加速も、非現実的な快感を覚えるのでありますが、その重さによって、下手をすると車より行ける道が限定されますから、やっぱり釣り師の足は、モンゴル遊牧民の足は、オフロード車であります。余談ですがツアラーは、羊肉がどの肉より好きです。それもラムではなく、癖の強いマトンが好きなんです。あの何とも言えぬ香り、考えただけで涎が垂れてしまいます。こういう嗜好傾向もありまして、ツアラーの前世はモンゴル遊牧民、そうではないかと思うのであります。
余談はこれまでにして、XRを止めたのは前々回と前回の中間であります。今日はドライフライを用いることにしました。
秋はテレストリアルの季節です。この川に大物がいるとしたら、大型の陸生昆虫を食っているに違いない。そう考えて、ティペットの先へ結びました。
数ポイント丁寧に探るも、魚っけがありません。どでかいフライだから魚がビビっている。そういうこともあるかもしれませんが、それでも、「どんなんかいな」と見に来るくらいのことはあるはずです。
それがまったくないのです。
川そのものが沈黙しております。
そういえば……。またネガティブなことを考えついたツアラー。
そういえば、三連休中に訪れたこの川には、釣り師がほぼいなかった。三連休にもかかわらずにです。フライフィッシャーどころか、餌釣り師も見なかった。数人見かけたのは、関東の遠い県ナンバーの脳天気な連中だった。釣果重視の群はいなかった。
ということは、やっぱり……。
いいや、ここまで来たら、何としても釣るのだ。
ツアラーは先に大きなプールを見つけて、そこをじっくりやるつもりでフライをスタンダードなパラシュートフライに換え、ティペットを細く、そして2ft付け足し、プールのケツから丁重に流したのです。
ここで魚が出るとすれば、底に点在する岩の後か、流芯の当たる岩盤沿い、その前数センチを綺麗に流れたときだろう。
そう思って、丁重に魚に見られないよう、腰を低く釣りました。プールの頭まで時間を掛けてじっくり探ったのですが、全く反応が見られない。あと残るのは流れ込みの向こう。そこは流芯が手前にあって、その向こうに小さく巻いた流れのあるところ。フライではドラッグがかかり、とても難しい。しかし、いかにもいそうです。でも、これまでも、いかにもいそうな場所で無反応が続いております。
まあ、ダメ元だ。
ツアラーはなにげにフライを入れました。そのフライが流芯の流れに喰われて引き摺られたその後に、大きな魚が追いかけて来るのが見えました。
「し、しもうた」
がっくりと首を落とすツアラーでありましたが、気を取り直し、再度フライを入れてみました。
今度は流芯の向こうへティペットをグチャグチャに全て落とし、ドラッグの掛かりを遅くする作戦です。
フライは落ちると、迷うようにフラリと流芯方向へ流れましたが、小さなスポットの反転流にかろうじて乗って流れてくれました。そのフライが一周するころ、ズボンという波紋と共に、フライが消えました。すかさずロッドを立てると、魚は一気に下流へ走ります。少しリールからラインが出ました。
「岩魚か?」
どうも、この暴れ方は岩魚とは別物の感じです。プールの尻でジャンプまでするではないですか。
「レインボーだ」
この川にもレインボーがいたんですね。ちょっとガッカリですが、それは贅沢というものです。慎重にやり取りして、捕ったのがこの魚です。



写真の取り方が下手くそで、小さく写っておりますが、あきらかに尺越えであります。
ほ、本当だって。嘘じゃないって。
信じてくれぇぇぇ。
ということで、ツアラーの今シーズンは終了しました。
なんとも、いやはやの、2011年でした。



今週は荒天が予想されるため、放流はいたしません。