渓流も禁漁が近づき、今年も余すところ、あと僅かになりました。
渓流が禁漁になりますと、来年3月1日まで、特別な場所を除いては、渓流釣りはできません。
来月になりますと、お気軽に近所の川に行きましょう。というわけにはゆかず、近い所で長野、遠い所では栃木まで遠征しないと、川での釣りはできません。

思い起こせば、忙しさを言い訳に、今年も良い釣りをしておりません。川に丸一日、刺さっていた記憶は皆無なのであります。
釣りに飽きたわけではありません。頭の中には釣りが満載で、いつでも釣りに逝きたいのでありますが、いざとなると、面倒臭くなって、ろくな準備もせずに、手持ちのフライを流して、お茶を濁すような釣りばかりしておりました。

気が付けば禁漁まであと一週を残す9月の週末でありました。
このまま禁漁を迎えると、来年の3月まで悔いを残す。釣り堀ツアラーのケツにようやく火が点いたのであります。
一週前から翌週逝く川に狙いを定め、狙った川に向くだろうフライを巻いたのであります。
ライン、リーダー、ショット、ティペット、etc……。ドライフライ、ウエットフライ、ニンフの釣り、現場で必要になればどの釣り方もできるように、フライと小物を揃えました。
表面は穏やかに装っておりますが、ツアラーの内心はメラメラと火が燃えております。
「この週末こそは、勘弁ならねえ。根こそぎ総ざらえして、キャンいわしたる」
メラメラ燃えるツアラーが狙いをつけました川は、中越地方の中河川でありました。

夜明けにならぬ間に出ようと思い、愛機、XR250へ、武士の魂を前夜に括り付け、即座に出発できよう準備しておりました。
翌朝であります。寄る年波なのでありましょうか、すっかり寝坊し、目が醒めた時間は、日が昇った6時過ぎであります。
週末です。出遅れると、先行者に川を荒らされます。
うう、今日も出遅れた。
首を項垂れるツアラー。しかし、禁漁間近のこの時期、寝坊した程度で諦めるわけにはまいりません。
先行者に荒らされようとも、あの手この手で魚を引き摺り出してやる。新たに闘志を燃やして、愛機を車庫から引き出すのでありました。

ツアラーの自宅から、目的の川までは、空いていれば一時間程度で辿り着けます。
しかし時刻は、軽トラが蠢き出すにちょうど良い午前7時過ぎです。稲刈りのトップシーズンは過ぎたりとはいえ、おる、おる。
黄色と赤の涙型ステッカーを貼り付けた軽トラが、所構わず先を急ぐツアラーの前に立ち塞がるのであります。
ええい、邪魔だぁー。どきやがれー。
ヘルメットの中で、くぐもった叫びが響きます。幸い、田舎の国道です。黄色い車線で仕切られた道ではありません。
え、えーすくらめんとぉぉぉ。(スペイン語で、こん畜生)と、くぐもった叫びを発し、ツアラーはアクセルグリップを一捻りするのであります。
たったニーハンとはいえ、100㎏ちょっとの車体に、28馬力のエンジンを積んでおるXRです。軽トラごときをものにはしません。あっと言う間にごぼう抜きであります。
勿論、せっ、制限速度以内でありましたと、付け加えさせていただきます。

と、急ぎましたツアラーが到着した川は、このような川です。



バイクは車では駐めるに遠慮するような狭いスペースに駐められます。



取り出しました武士の魂は、4番10ftのロッドです。フライは12番のパラシュートフライ。名前はありません。とにかく、水面に貼り付くよう、厚くハックルを巻いたフライです。
川幅は、対岸までに20ヤードくらいはあります。
しばらく瀬が続いておりまして、ツアラーは瀬の中の小さな深みを狙いながら釣り上がります。
フィッシュウインドゥと称して、魚から釣り師が見える距離が歴然としてあります。ツアラーの身長からすると、6mまで近寄っても、魚に発見されません。膝をつけて、地面から1mの高さまで身を屈めると、その距離は3mまで縮まります。
但し、足元の石を一つたりとも転がしてはなりません。静かな水面では、水面に波紋を立ててもなりません。音を立てずに静かに近寄れば、前述の距離までは、魚に近寄ることができます。
そうやって6mまで近寄り、瀬の少し深い筋にフライを流しながら釣り上がりました。
出る、出る。
10㎝に満たないチビヤマメが次々とフライを咥えます。これと目をつけた筋には、数匹群れているようで、煩いくらい出ます。
チビヤマメが掛かるとフライが濡れて沈みます。その度にフライを乾かし、フロータントを施さねばならず、面倒臭い。
視線を上に向ければ、良さそうなプールがありました。瀬の中で小さなヤマメと遊んでいる暇はありません。ツアラーは瀬のポイントを無視して、足を速めました。

着きましたプールは、狭まった淵頭から水が吐き出され、流芯の右岸は浅く、川底に岩があるゆっくりとした流れです。左岸は深く、底は砂地でゆっくりと渦を巻いております。
大きな魚は、小かげろうの時季は右岸だろうけど、秋の禁漁を間近にしたこの時季は、左岸だとツアラーは見当をつけました。
淵を狙う場合、一番先に、大きな魚がいそうなポイント狙うべき。これはツアラーの持論です。
手前や、浅いポイントから釣っておりまして、なんらかのトラブルがあると、そのポイントは駄目になります。ツアラーは何度もそのような経験をしております。
ですから、最も大きな魚が着いているであろう、左岸の渦巻く流れにフライを入れました。
反転流のある流れはフライが最も苦手とするポイントです。
ツアラーの使うリーダーは、普通の9ft5Xのリーダーに、6Xのティペットを3ft足したものです。
この短めのリーダーで、渦巻く複雑な流れに、フライを載せて流さねばならないのであります。
ここで秘訣があります。
秘訣は内緒でもなんでもないので書きますが、まず、先程申しましたフィッシュウインドゥから推定される、魚から発見されない距離まで、ギリギリ近寄ります。夏は大きなフライを使えるので、水面に貼り付く大きなフライを選定します。
ここまでは普通の釣り方です。ここにもう一つ、ウエイトホワードのラインをひっくり返して、細いランニングラインのほうを、リーダーに結ぶという秘訣を用います。
フライは流れに揉まれて流れます。ある程度渦巻きを流れると、当然流れにフライが引かれます。その時、ああら不思議、ひっくり返したラインなら、ひょいとメンディングをしても、フライは殆ど動きません。何度でもメンディングができます。
ウエイトホワードのランニングラインなら、一番ラインくらいの重さです。そのような軽いラインが、4番のロッドで投げられますかと申しますれば、投げられるんです。但し、距離10ヤード以内で、リーダーの長さ12ft以内という条件はありますけどね。
くどくどと書きましたが、ここで釣れた魚はこれです。



同じように少し上のプールでこの魚。



その上のプールで、この魚でした。



その上に遡ろうとしたら、ルアーロッドを持った先行者がおりました。
淵だけしか狙わなかったので、ツアラーの足が速く、追いついたようです。まだ朝の間でしたが、数匹のヤマメを釣って、満足して引き上げるツアラーでありました。
ご質問がありましたら、お店でお尋ねください。嘘を交えて、大げさにお話しいたします。

秋の禁漁間近にならないと、ケツに火が点かないツアラー、禁漁期に入り、ようやくやる気を見せております。
次は、会津にでも出没してみようかしらん。

お待たせいたしました。この週末、10月7日、日曜日に、下の池にも放流致します。
簡単に放流情報を書いて、終わりにいたします。