アメリカではオバマ大統領が再選されました。
そのような事柄は、弱小の釣り堀屋には、どうでもよい出来事であります。
それよりは、穏やかな天候で暖かい日が続くと良いなあ、と願っていたのでありますが、11月に入ってから、天候に恵まれる日はなく、唯一、5日の月曜日が、それでも穏やかな日和でありました。

その月曜日の早朝、一台のバイクが北陸道を走っておりました。
彼は北陸道から上信越道に乗るつもりだったようでしたが、出発間際に急に気が変わり、180°方向を変えて、磐越道から会津方面に行く先を変えたのであります。
当初は犀川方面で、本流のパワーウエットの釣りを楽しむ予定だったから、昨夜はそのつもりの道具を準備していたのですが、寝起きにどういう心理変化か、急に本流で遠投する釣りが面倒臭く感じられ、近距離でのせこい釣りがしたくなり、会津方面へ行く先を変えたのであります。

晩秋の高速道は寒く、途中で見た温度計の表示は、確か、5℃だったような。空は曇りがちで、やっと昇った太陽の光は、晩秋の高速を走る彼を暖めてはくれません。
寒空の高速を、バイクで走る彼とは、釣り堀ツアラーのことでした。
初夏の良い時季に釣りに出掛けずに、禁漁を過ぎて、もうすぐ雪が降ろうかという時季に、慌てたように釣行を重ねております。
この日は平日ですが、この天気を逃すと、この後、上天気には恵まれないだろう。そうなれば、自ずと釣りはお終いになる。
この機を逃せば次の釣りは、来年の春先、九頭竜川の釣れないサクラマス釣りまで我慢しなければならない。
フライフィッシングをライフワークとする者としては、この上天気は見逃してはならない機会であります。
釣り堀ツアラーは、急遽、休暇願を提出したわけです。休暇届けにどのような理由を書いたかは、問わないで下さい。釣りに行くとなれば、どのような嘘もつきます。釣り師のみなさんなら、誰でも身に覚えがあるでしょう。

という塩梅で、釣り堀ツアラーは、北陸道を新潟方面に走っておりました。
急遽目的地を変えたので、朝、どたばたと支度替えをいたしまして、家を出ました時間は、午前7時近くでした。
観光であれば、のんびりと下道を走り、あちこち寄りながら、昼頃会津に到着して、ゆっくりと飯などを食って、そこいらを散策すればいいのでしょうが、釣り堀ツアラーを名乗る以上、釣りが目的であります。
ですから、目的地の会津までは、高速道を使って、急いで行く他ありません。
言うまでもありませんが、高速は真っ直ぐです。バイクは、とにかく走る、走る、走るです。趣もなにも、あったもんじゃありません。
しかも朝の気温5℃です。100㎞も速度を出すと、どのような着衣を着ていても、冷気がどこからともなく忍び込みます。
寒い寒い。
遠くの山岳には、いつ降ったものやら、積雪が見られました。その光景も、感ずる寒さに追い打ちをかけるのであります。
紅葉は最盛期でしょう。山は橙に燃えておりましたが、寒さに震えるツアラーの目には映えません。とにかく会津を目指して走るのでありました。



着きました川は、阿賀野川の上流です。
先月も訪れましたが、水量はその時よりも数割増えているようであります。
土手から覗く、堰堤の大きなプールには、何個かのライズリングが見られます。
釣り券を購入したファミリーマートのおじさんが言うには、先だって、釣り大会が行われたということで、そのために、大量の魚を放流したと話しておりました。
先回訪れた時は土曜日で、土曜日にも拘わらず、ろくに釣り人はおらなかったこの川には、放流効果でしょうか、月曜の平日に、数名のフライフィッシャーと、その倍のルアーアングラーの姿が見えました。

という状況を見ますと、魚はスレてはいるのだろうけれど、数はいるらしい事実が窺われます。
ツアラーはゆっくりと支度しながら、釣ろうと思っているプールに立っているアングラーが、釣れなくて諦めて帰るところを待つのであります。
このところ、心を入れ替えたツアラーは、スレたマスを釣る手管を、何種類か持ち合わせております。
先行者が釣れなかったプールでも、もしかすると釣れるかもしれません。と控えめに表記しますが、内心はもっと不遜です。

ゆっくり支度をして、完全に昇った太陽で、冷えた背中を温めて、先行者が諦めるところを待っておりますと、幾らも待たぬ内に、先行者はお帰りになりました。
ツアラーは悠然とプールの開きまで歩き、そこから釣りを始めました。
取り出しました武士の魂は、このところ愛用しております、4番10ftのロッドです。まず、ドライフライから試してみます。
ラインはウエイトフォワード4番のラインです。そのラインをひっくり返し、細いランニングラインのほうにリーダーを結びました。リーダーの長さは9ftです。
このシステムですと、短いリーダーでも、驚くほどドラッグが掛かりません。但し、10ヤード以上は投げられません。
先回訪れた時は、ドライフライが好調でした。大きな魚が小さな動作で、ツアラーのドライフライを吸い込むのでありました。先回は好調だったドライフライです。今回は如何なものでしょうか。
第一投です。どりゃああ。
フライは、何もなく流れて行きます。続けて第二投、続けて、続けて。とうとう、プールの頭まで探りました。
先回と違い、全く反応はありません。水量が数割増えているので、ドライフライは、どえらい不利みたいです。

そこで、ラインはそのままにして、アウトリガーのニンフスタイルに切り替えます。フライはブラックリーチです。黒のマラブーでふわふわに仕上げたこのフライを、いかにスレていても、ニジマスが拒めるはずがありません。
ウエイトには内緒でもないある物を付けます。知りたい場合は、お店でお尋ね下さい。
そのある物は、水の抵抗が大きいため、狙った流れに入れたフライが、ラインの重さでこちらへ引き摺られて近寄る動作を防ぐ、アンカーとしての役割も果たします。
ツアラーはプールの頭からボチャンと、フライフィッシングにあるまじき水音を立てて、フライを水中へ叩き込みました。そのまま、逆さウエイトホワードのラインを張ります。
逆に使うラインは軽いので、普通のガン玉でもアンカー効果を期待できますが、ある物はガン玉の数倍の抵抗を持ちますので、フライは全く手前には寄らずに、ツアラーから8から9ヤードの距離を保って、狙った筋を流れて行きます。
これで釣れぬわけがない。
ツアラーは確信しながら釣り下りました。

プールの頭を過ぎて、中間を過ぎて、開きまで来ました。この間全くアタリがありません。
おかしいと訝しみながら、開きの後半にある沈み岩周辺を探ります。
???。何かが触った感触です。おかしいと思ったら、即座に合わせる。
とりゃぁぁ。
ツアラーはロッドを立てました。どばばばー。ラインの突き刺さっているプールの開きに、派手な水飛沫が湧き上がりました。
見れば、60センチはあろうかというマスが、のたうっております。
こ、これはやばい。ドライフライからリーダーをそのままに転用したから5xです。
5xのリーダーの先にアンカーのウエイトを付け、それに6xのティペットを30㎝ばかり足しております。
流れのある川で、60㎝のマスと遣り合うには、6xの細さでは、不安があります。
ツアラーがビビッておりますと、マスは、上流へ走りました。上流には河畔木が川に被っており、枝が水中に出ております。そこへ入られると、厄介な塩梅になります。
ツアラーはロッドを下流へ倒し、弓なりに曲げて、マスを止めました。
止められたマスは、今度は下流の瀬に向かって、どどどー、と転がり落ちて行きます。
マスの凶暴な暴れぶりに、ロッドチップが強風に煽られたススキのように右往左往しております。幸い川は浅いので、マスを追って走る行為ができます。
ティペットが細く、力任せの遣り取りはできないので、ツアラーは、下ったマスを追って、川を走りました。
マスの下流まで回り込むと、マスの勢いは止まります。
これは獲れる。
ツアラーは止まったマスに一瞬、慢心しました。高くロッドを立てて、マスを浮かび上がらせようと試みます。
高く立ててたロッドの先で、マスが首を一振りしました。マスが首を振りますと、ロッドが感じていた重量感がふと消えて、ラインが川の流れに載って足元へ流れてきました。
あっ、ばれた。
ツアラーはガックリと首を落としました。
目の前のプールに魚っけがなかった理由は、今ばらした巨大な魚が、他の小さな魚を追い払ったためなのでしょう。
ツアラーは目前のプールに、唯一存在した魚をばらしてしまったのであります。

ばらした魚には証拠がありませんから、話はいつでもできます。
下流には、堰堤の巨大なプールに流れ込む、流れ込みの頭があります。そこで魚を釣ってみせないと、なんのために寒い高速を、震えながらバイクで走ってきたのか、意味がなくなります。
その流れ込みは、足元から深そうで、アウトリガーの釣りにはよさそうでしたが、ツアラーは気まぐれに、ごく一般的な、ウエットフライの釣りに切り替えました。
ラインを正規の状態に巻き替え、ラインの先端にブレイテッドのエキストラファーストのシンキングリーダーを付けました。ティペットは、4xに上げます。フライは同じブラックリーチです。

流れ込みの頭からフライを流し込みました。注意するべき点は、フライを走らせないことです。川の流れよりもゆっくりと流します。
すると、第一投目からアタリがあります。合わせますと、魚が頭を振る気配。尚もロッドを立てると、魚は走り出しました。
魚が走るとすぐに重量が軽くなりました。また、ばらしです。巻いたフライのフックが甘いのでしょう。針が刺さらないのだと推測しました。
フライを替えて再度釣り下がります。
数投後、またアタリました。ロッドを立てると、重量感があって、すぐに軽くなります。
またばらしです。
このフライのフックは、外国製のフックです。針先が甘いことは承知しておりおましたが、
問題は針先だけではなさそうです。
ツアラーはバットの柔らかいロッドを使用しております。ですから、合わせはロッドを後方に倒すのではなく、バッドを持ち上げるようにしなくてはなりません。
三回も失敗してようやく気づくツアラーであります。

ウエットでスレたマスを釣る場合は、アタリ即合わせだろうとツアラーは感じております。
当たった、そのままで動作を止めて放置していますと、違和感を感じたマスは、フライを吐き出します。
ラインを張って、フライを速く走らせる釣りをしていれば、向こう合わせで掛かりますので、合わせは必要ありません。しかし、スレたマスは、速く走るフライを警戒して口にはしません。
アタリを感じるには、肩の高さにロッドを水平に構えることだと思います。
そのように構えますと、ラインの重さの変化がよく分かります。じわりと重く感じますので、その際には、グリップを高く持ち上げる感じで、ずばっと合わせをくれます。
今度は失敗せぬと、バッドで合わせて獲った魚がこれです。





長くなりましたので、少し急いでおります。
時間を見れば午後一時でした。すぐに帰らないと、下道で三時間かかるだろうから、暗くなるまでには、釣り堀に辿り着けません。
後ろ髪を引かれながら釣りを止めました。



遠過ぎてよく分かりませんが、堰堤の大きなプールを釣るフライフィッシャーです。

この後、ツアラーは、西会津で味噌ラーメンを食べて帰りましたとさ。
この記事に対し、疑問な点がありましたら、お店でお尋ね下さい。嘘を交えて説明いたします。

今週は放流いたしません。
スレたマス釣りをお楽しみ下さい。

追記、紅葉の季節になりました。
再来週の11月24日と25日に、アルピノ鱒を釣られたお客様、先着20名様に、恒例の赤ワインプレゼントという太っ腹な、催しを計画いたしました。
是非、いらして下さいませ。
ワインがなくなり次第、終了となります。

再追記 10日(土)があまりにも釣れなかったので、明日、11日に、急遽放流いたします。