11月を目前にしますと、上着なしでは肌寒くなりますな。
釣り堀においでの際は、是非、暖かくしておいで下さい。

今週は、久しぶりに釣堀ツアラー旅日誌を更新します。
釣堀ツアラーを名乗りますが、今回は釣りのレポートではありません。なんと、なにを勘違いしたのか、山登りのレポートであります。
釣堀屋は、BS3のグレートトラバースを見て以来、日本百名山一筆書きに挑戦中の、田中陽希氏に、ゾッコン惚れました。
田中陽希氏のファンになって以来、30年来忘れていた登山に目覚め、それで、この秋、百名山のうちの、2座に登頂したのであります。

釣堀ツアラーを名乗る以上、山登りでもバイクで行かなくてはなりません。先に述べた秋に登頂した2座のうち、最初の1座は、車で現地まで行きましたので、釣堀ツアラーを名乗ることはできません。
よって、次の1座、越後駒ヶ岳の登頂をレポートいたします。

突然でありますが、10月半ばの土曜早朝であります。釣堀屋はそっと、愛機である、XR250を引き出しました。
秋分の日を一ヶ月も過ぎますと、朝の4時半は、まだ夜中であります。近所の迷惑になるといけないので、釣堀屋はXRに火を入れるやいなや、空ぶかしをせずに、逃げるように家を出発いたしました。

向かうは越後駒ヶ岳の登山口のある、枝折峠であります。
出発時の柏崎付近の気温は、10度を超えたくらいでした。魚沼に入りますと、8度まで下がり、旧湯ノ谷村では6度になっておりました。
いやあ、寒いのなんのって、登山をする前に、凍死しそうです。
もし、登山保険に加入しているとすれば、登山口に着く前の凍死の場合、保険金は出るのだろうか? 
ツアラーは、保険に加入していないくせに、余計な心配をしながら、走るのでありました。

寒さに凍えながら、釣り堀ツアラーは、枝折峠に続く、おねおねした峠道を、バイクをバンクさせて、ひらりひらりとコーナーを抜けて行きませんでした。
とにかく、半端なく寒いのであります。クラッチを握る手がかじかんで、コーナーを華麗に抜けるどころの騒ぎではありません。ツアラーは、軽トラ並みの速度で、もっさりと登るのでありました。
もっさりと、幾つものコーナーを抜けると、道は標高を上げました。日は、ようやく景色を照らしております。
気配を感じてふと右方向を見上げれば、そこに越後駒ヶ岳が、がんとして、そこに鎮座しておりました。




これから、あれをやるのか、おい。
あれに登るのだとは、俄に信じられなくなったツアラー。思わず呟きました。
そうだ、これから、あれを、やる。
眦を決したツアラー、気合いを込めて、アクセルを、ちいとばかり開くのであります。



いよいよ登山口の枝折峠に到着しました。
時刻は6時半であります。
そそくさと支度を済ませて、登山届けも出さずに、というか、出し方が分からん。という些事は放っておいて、駐車場脇の登山道より、駒ヶ岳を目指して登り始めたのであります。
登山道を上り始めてすぐに、周囲の展望が開けました。左方は銀山湖のある谷です。銀山湖のある谷からは、雲海が盛り上がり、盛り上がった雲海が、尾根を超えて溢れ落ちております。




幻想的な光景でした。
雲海を眺めつつ、釣堀ツアラーは標高を上げます。
まず、最初の峠である、明神峠の御堂に到着しました。

気温は低いのですが、動いて暑くなりましたので、ダウンのインナージャケットと、ウインドブレーカーを、ここで脱ぎました。
脱いだ服をザックに詰めていると、下から年配っぽい男の話し声が聞こえます。
登ってきた道を見下ろせば、菅笠がちらほらと見えました。見たところ、70歳前後だろうと思われる年配の登山者、4人組です。
年配なので、遅いに違いない。抜かれると、また追い越し返すのが面倒だ。追い付かれる前に、出発しよう。
ツアラーは、ペットボトルのお茶を口に含むと、慌ててザックを担ぎました。この判断が、後のツアラーを苦しめたのであります。

明神峠から先は、小さなピークを上り下りする道が続きます。登って降りて登って降りて、いくつかを繰り返すと、日頃の運動不足が頭を擡げました。
ツアラーが、荒い息を吐き出しながら足を止めますと、来た道の方向から、年配の登山者の声が聞こえるのであります。
こっちは息が切れて、はあはあと、荒い息を吐き出す姿が精一杯の有様なのに、後ろから迫る年配の登山者は、元気そうに、ひっきりなしに喋っております。
なんという連中だ。
少しだけ戦慄を覚えました。しかし、ツアラーはまだ中年です。年配の登山者に負けるわけにはいきません。
そそくさと先を急ぐのであります。

いくつかのアップダウンを繰り返し、最後の小ピークである、小倉山を越えますと、いよいよ駒ヶ岳が近くに見えます。紅葉の盛りは過ぎておりましたが、まだ、まだ、紅葉と言える美しさに溢れておりました。
草いきれと言います。草藪の濃厚な香りを言うのでありますが、山にも匂いがあります。草いきれと似た、少し違う濃厚な山の香りに、釣堀ツアラーは包まれております。
濃厚な山の空気を感じながら、ツアラーは、どんどん先へ進みました。周囲は次第に開け、登山道には、岩肌が見えるようになります。
一つの登りを超えて、少し下り、木道を行くと、眼下に百草の池と名付けられた湿地が見えました。

目前には、越後駒ヶ岳の急登が控えております。

幾人もの登山者が、急登に列を作っている姿が遠目で見られました。
背後から迫る、ジジイも、もとい。年配の方の声は、いつの間にか聞こえなくなっておりました。
ふふ、ツアラーの健脚ぶりに恐れをなしたか、グフフフー。
俄に気をよくしたツアラーは、頂上へ続く急登に取り付きました。

しばらく行くと、山頂が間近に見えるようになります。
つるりとした岩肌に、ペイントされた登山道が、真上に伸びております。もう少しで山頂なのでありますが、ツアラーの足に異変が生じております。
最初は右足の腿の内側が痙ったのであります。右足を庇っていると、痙攣は、左足にも移りました。どうにも歩けなくなって、数メートル登っては、立ち止まるを繰り返すツアラーであります。
眼下を見れば、抜かれまいと意識した年配の登山者が、滑る急登を、しっかりとした足取りで、登り近づいております。
こりゃ、敵わん。
ツアラーは、負けを認めました。降参して、道を譲るのであります。
年配の登山者は、ツアラーを追い抜きざま「もう少し、頑張って」と、お声掛け下さいました。
ツアラーは、首項垂れて「ありがとうごぜいますだ」とお返しいたしました。


やっと急登を超えて、駒の小屋へ到着しました。
そこである事実に気が付きました。
ツアラーが抜かれまいと意識した年配の方々は、駒の小屋を管理する方でした。運動不足のツアラーが、敵う相手ではありません。
ああ、なんと、無駄に急いだか。お陰でペースを乱し、足に変調を来しました。

どうにもならん。苦笑いしたツアラー。駒の小屋を出て、何組もの登山者に抜かれつつも、ようやく登頂いたしました。


山頂でサッポロ一番味噌ラーメンと魚肉ソーセージの昼食を摂り、釣堀ツアラーが、出発点の枝折峠に辿り着いた時刻は、2時半でありました。
往復8時間の登山に、精も根も尽き果てた感のツアラーでありましたが、次も、百名山に登りますぞ。

半身裸で、枯れ枝の杖をついた、裸足の登山者の話など、まだまだ書きたいエピソードはあります。
しかし、紙面と時間が尽きました。続きはお店で。では、また来週。

登山に疲れましたので、今週の放流はなしです。